セルラー系 vs 非セルラー系:IoT通信規格の選び方
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Source: Pixabay
IoTデバイスを開発する際に、必ずと言っていいほど最初に浮かぶ疑問があります。
それは「どの通信規格を採用すべきか?」ということです。
LoRaやSigfoxなどの非ライセンス系通信は、自社で独立運用でき、モバイルネットワーク事業者への利用料も不要というメリットがあります。
しかし一方で、ライセンス系通信(2G/3G/4G/5G、NB-IoT、LTE-Mなど)には、信頼性・品質・セキュリティといった重要な利点が備わっています。
本シリーズについて
この記事は、IoT通信の標準規格をテーマにした3部構成の第1回目です。
今回は「ライセンス系(セルラー系)」と「非ライセンス系(非セルラー系)」通信規格を比較し、LPWA(Low Power Wide Area)用途に適した通信方式を理解することを目的としています。
非ライセンス系通信の特徴と制約
LoRaやSigfoxなどの利点
Wi-FiやZigbeeのような屋内向け技術とは異なり、LoRaやSigfoxは低消費電力かつ広範囲通信が可能です。
特にLoRaWANは、自社専用ネットワークを構築でき、通信事業者との契約や利用料が不要という「自由度」が魅力です。
ただし、地域差と制限に注意
しかしこの自由には制約があります。
非ライセンス帯は国や地域ごとに周波数が異なり、たとえばヨーロッパ・米国・アジアでは利用できる帯域がそれぞれ違います。
グローバル展開を考える場合、この差が大きな課題となります。
また、ヨーロッパでは送信時間(デューティサイクル)に制限があり、一定時間内に通信できる割合が非常に低く抑えられています。
米国では代わりに「周波数ホッピング」が義務付けられるなど、地域ごとの法規制対応が不可欠です。
干渉と信頼性の問題
非ライセンス帯は他機器との干渉が発生しやすく、通信の安定性に影響することもあります。
例えば、米国の900MHz帯ではベビーモニターなど多くの機器が利用しており、ノイズ環境が厳しいのが現状です。
ゲートウェイ設置の手間
LoRaWANの場合、クラウド接続のためには専用ゲートウェイが必要です。
これは追加コストや運用負担につながり、スケールするほど管理が複雑になります。
ライセンス系通信の強み
グローバルで一貫した品質
一方、NB-IoTやLTE-Mといったライセンス系通信は、世界中で同じ品質・セキュリティレベルを提供できます。
これらは人と人との通信ではなく、機器間通信(M2M/IoT)向けに設計されたモバイル規格です。
通信可能なデータ量はLoRaやSigfoxより多く、QoS(通信品質)も高く保たれます。
さらに、バッテリー寿命も10年以上を実現可能です。
コストのハードルも低下
かつてはライセンス通信のコストが課題でしたが、現在では状況が大きく変わっています。
1NCEが提供する「IoTフラットレート」プランでは、10年間・わずか2,000円+SIMカード代(200円~400円)で通信が可能。
データ通信量500MB分やSMS250通も含まれており、料金体系の複雑さを解消します。
1NCEは欧州最大手通信キャリアのドイツテレコムと連携し、170以上の国・地域で高品質なモバイル通信を提供しています。
これにより、従来の「国ごとの契約」や「煩雑な料金設定」は過去のものとなりました。
まとめ:プロジェクトの目的に合わせて最適な通信を
グローバル対応・高信頼性・長期運用が求められるIoTプロジェクトでは、ライセンス系通信(NB-IoT/LTE-M)が有力な選択肢です。
一方で、ローカル限定や低コスト運用を重視する場合は、LoRaなどの非ライセンス系も有効です。
次回(第2回)では、利用可能なセルラー通信規格の詳細比較と、各IoT用途でのベストプラクティスを解説します。
IoTデバイス用の通信規格選定でお困りの際は是非こちらまでお問い合わせください。
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