モバイル通信規格の概要:IoT時代のセルラー通信について

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モバイルIoT通信について語るとき、2G、3G、4Gはもちろん、IoT向け規格であるNB-IoTやLTE-Mといった技術も登場します。

では、IoTデバイスをインターネットに接続する際、どのモバイル通信規格を選ぶべきなのでしょうか?
本記事では、現在利用可能なセルラー通信規格を整理し、それぞれの特徴をわかりやすく解説します。


セルラー系 vs 非セルラー系 通信技術の振り返り

前回の記事(第1回)では、IoTプロジェクトにおける無線技術選定の第一歩として、セルラー系通信と非セルラー系通信を比較しました。

LoRaやSigfoxといった非セルラー系通信規格は、モバイル通信キャリア(MNO)を介さずに独自ネットワークを構築できる自由度が魅力ですが、
各国の電波法規制や周波数帯の違いにより、実装や認証の面で複雑さが増します。

一方で、セルラー系通信規格はグローバルに共通した標準化が進んでおり、
導入の容易さ、信頼性、そして長期的な運用の安定性が大きな利点です。


セルラー通信規格の進化

通信規格における「G」は“Generation(世代)”を意味します。
ここでは、1Gから最新の5Gまで、モバイル通信の進化を振り返ります。

1G:アナログ通信の始まり

1980年代後半、オーストラリアのTelstraが商用1Gネットワークを開始しました。
当時の通信は音質が悪く、セキュリティも低く、電池寿命も短かったため、短期間で終焉を迎えました。

2G:デジタル通信の幕開け

1990年代に登場した2Gは、初のデジタル通信規格です。
音声通話の品質とセキュリティが大幅に向上し、**GSM(Global System for Mobile Communications)CDMA(Code Division Multiple Access)**といった標準が普及しました。
この時代に、世界中で携帯電話が一気に拡大しました。

3G:インターネット接続の時代へ

2000年代初頭に導入された3Gでは、音声に加えてデータ通信が可能となり、
メールやインターネット接続といった「モバイルデータ時代」の幕開けとなりました。

通信速度は最大384kbps〜数Mbpsまで向上し、動画や画像データの送受信も現実的になりました。
日本ではNTTドコモがいち早く商用3Gサービスを開始しています。

4G(LTE):高速・大容量通信の普及

2010年代に入り、LTE(Long Term Evolution)技術による4Gが主流となりました。
下り最大1Gbps近い高速通信を実現し、スマートフォンの普及を支えた世代です。

4Gの登場により、ストリーミング、クラウド、モバイルアプリなどのエコシステムが発展しました。
このLTE技術は、後にIoT向けに最適化されたNB-IoTおよびLTE-Mの基盤となっています。


IoT向け通信技術:NB-IoTとLTE-M

4G世代以降では、IoT用途に特化した新しい通信規格としてNB-IoT(Narrowband IoT)とLTE-M(LTE for Machines)が登場しました。

  • NB-IoTは狭帯域通信を利用することで、広範囲かつ深い屋内エリア(コンクリート壁の奥など)でも安定通信が可能です。
    少量のデータを1時間〜1日に1回程度送信するような用途(メーター、環境センサーなど)に最適です。
    低消費電力設計により、電池駆動で10年以上の運用が可能です。

  • LTE-MはNB-IoTより広い帯域を使い、高速かつ低遅延の通信を実現します。
    一方で電力消費はやや増加しますが、移動体通信(車両や物流トラッカーなど)にも適しています。

これらの技術はどちらも既存のLTEネットワークを基盤としており、モバイル事業者のインフラを活用できる点が大きな利点です。


5G:次世代通信の幕開け

最新の5G(第5世代移動通信システム)は、超高速・超低遅延・多数同時接続を実現する通信技術です。
通信速度は最大10Gbpsに達し、ミリ秒単位の応答が求められるAR/VR、遠隔操作、スマート工場、自動運転などの分野で活用が期待されています。

ただし、5Gはすぐに4Gを完全に置き換えるわけではなく、今後しばらくは4Gと5Gが併用される過渡期が続く見込みです。
この並行運用により、将来的にはさらなる通信品質とネットワーク容量の向上が期待されます。


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ライセンス系通信のコストは、近年大幅に低下しています。
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IoTプロジェクトをグローバルに展開する際の「複雑な料金体系」や「国ごとの契約負担」は、もはや過去のものです。


次回予告:最適な通信規格をどう選ぶか

この三部構成シリーズの最終回では、IoTのユースケースに応じた通信規格の選定方法と、
マルチモード対応による将来的な信頼性確保について解説します。

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