仮想移動体通信事業者（MVNO）とは

従来の移動体通信事業者（MNO）は、移動通信ネットワークのバックボーンを形成するセルタワーの建設と管理を担う、大企業です。一方、仮想移動体通信事業者（MVNO）は、物理的なインフラを所有せず、MNOからネットワーク接続を借り受けているサービスプロバイダーです。

MVNOとは

では、MVNOとは何でしょうか。広範な物理インフラを持つMNOとは異なり、MVNO（仮想移動体通信事業者）は仮想モデル上で動作します。MVNOは基本的に、ネットワーク容量をまとめて借り受ける、大規模な契約をMNOと結びます。この契約には、次のようなさまざまなネットワークリソースが含まれます。

• 無線アクセスネットワーク（RAN）： セルタワーを介し、ユーザデバイスとコアネットワーク間を物理的に接続します。

• モバイルコアネットワーク（MCN）：コールルーティング、加入者管理、データ伝送などのコア機能を担います。

• MVNOが借り受ける特定のネットワークコンポーネントは、MVNOの種類（後述）によって異なります。

• MVNO運用モデル：制御やインフラへの関与の度合いを指します。

MVNOにはさまざまな種類があり、制御やインフラへの関与の度合いがそれぞれ異なります。

• フルMVNO： 最高レベルの制御を有し、従来のMNOの多くの機能を再現します。多くの場合、フルMVNOは独自のコアネットワークインフラ（MCN）を持ち、課金、顧客サービス、SIMカード発行、マーケティングなどの運用を独立して行います。

• ライトMVNO：ホストMNOにコアネットワーク機能を大きく依存し、軽度に関与します。課金、顧客サービス、SIMカード発行などを管理する場合もありますが、RANとコアネットワークインフラはMNOに依存しています。

• サービスプロバイダーMVNO（SP MVNO）： 主にブランディングと顧客サービスに注力し、RANとコアネットワークの運用は共にホストMNOのインフラにほぼ全面的に依存しています。通常、課金、顧客サービス、販売活動は管理します。

• 仮想移動体サービス提供者（MVNE）： 仲介者として機能する特殊なタイプのMVNOです。独自のインフラを構築せずにMVNOを目指す他の企業（通常はSP MVNO）に技術的専門知識とインフラを提供します。

MVNOをIoTに利用する際の技術的メリット

MVNOは仮想インフラを利用することから、IoT導入には技術的なメリットがあります。

• 費用対効果： 独自のインフラを構築せずにネットワーク容量を借り受けることで、顧客に低価格でサービスを提供することができるため、コスト重視のIoT用途に最適です。

• スケーラビリティ（拡張性）： 柔軟なデータプランを提供していることが多く、IoT導入においてデバイスの接続数が増加しても、簡単にスケールアップ/ダウンが可能です。

• 低帯域幅データに注力：低帯域幅のデータアプリケーションに特化することが多く、ほとんどのIoTデバイスが必要とする最小限のデータ伝送に最適です。

• ネットワークの多様性： 複数のMNOネットワークへのアクセスを提供するMVNOもあり、冗長性を確保し、地理的に分散したIoTデバイスに対してより広範なカバレッジを提供できることがあります。

IoT用途に適したMVNOを選択するための技術的考慮事項

IoTプロジェクトに適したMVNOを選択する際は、技術的なポイントを慎重に考慮する必要があります。

• ネットワークカバレッジ： MVNOが利用しているMNOのネットワークが、IoTデバイスの想定動作エリアで十分なカバレッジを持っていることを確認します。

• ネットワークテクノロジーへの対応：2G、3G、4G LTE、または最新の5Gネットワークなど、IoTデバイスに必要なネットワークテクノロジーを、MVNOがサポートしていることを確認します。

• データプラン： データ許容量、価格設定、超過料金の可能性に着目し、MVNOが提供するデータプランを評価します。IoTデバイスの想定データ消費量に合わせたプランを探します。

• セキュリティ機能： IoTデバイスが機密情報を扱う場合は特に、データ伝送におけるMVNOのセキュリティプロトコルを確認します。

• API統合： 複雑なIoT導入に際して、管理プラットフォームとシームレスに統合できるAPIを提供するMVNOを検討します。