自動で温度調整するインテリジェントなサーモスタットから、リアルタイムの生産データを送信する産業機械まで、無数のデバイスが会話し、広大な情報交換ネットワークを形成しています。このエコシステムで機能するコンポーネントの1つがモデムで、多くの場合、目に見えません。では、モデムとはどのようなものでしょうか。
モデムとは
IoTモデムは、IoTデバイスの変換装置およびブリッジとして機能するコンパクトな電子ユニットです。デバイスをネットワークに接続し、データをワイヤレスでやり取りできるようにします。基本的には、デバイスの内部データ(多くの場合デジタル)を、選択したネットワークに適した形式(携帯電話の電波やWi-Fi信号など)に変換し、またその逆も行うことで、シームレスな通信を実現します。
モデムの仕組み
モデムの動作には、いくつかのステップがあります。
1. データの生成:デバイス内のセンサーまたは内部プロセスがデータを作成します。このデータは、温度測定からフィットネストラッカーの活動、振動センサーの警告まで、多岐にわたります。
2. データ処理・パッケージ化:データ送信に向けて、デバイスのアプリケーションプロセッサがデータを準備します。この処理により、ネットワークが認識できるようデータが正しくフォーマットされます。
3. モデムへのデータ送信: アプリケーションプロセッサが、準備されたデータをIoTモデムに渡し、送信準備を整えます。
4. 伝送のための変換: モデムの内部コンポーネント、特に無線周波数(RF)フロントエンドは、信号の変換器として機能し、データをデジタル形式から、選択したネットワークに適した形式に変換します。セルラーネットワークの場合、電波に変換されることもあります。
5. ネットワーク到達: 変換されたデータ(携帯電話の場合は電波)は、使用されている通信技術(Wi-Fi、Bluetooth、LPWAN)に応じて、モデムによりセルラータワーまたは別のネットワーク接続ポイントに送信されます。
6. 情報交換: ネットワークインフラ(携帯電話基地局またはWi-Fiルーター)は、データを受信して解釈し、コード化されたメッセージを把握します。用途に応じ、データは以下のようにさまざまな宛先に送信されます。
クラウドプラットフォーム: 分析・保存用に、クラウドプラットフォームに送信されることがあります。
別のデバイス: さらなる処理や動作に利用するため、別のデバイスに送信されることがあります。
コントロールセンター: 動作のモニタリングまたは動作をトリガーするため、コントロールセンターに送信されることがあります。意思決定機関に送られるメッセージを想像してください。
7. レスポンス: デバイスは、最初のメッセージへの応答として、ネットワークから指示やデータを受けとることがあります。たとえば、リモートコントロールセンターは、受信したセンサーデータに基づいて温度を調整するため、スマートサーモスタットにコマンドを送信することがあります。
8. モデムからプロセッサへの転送:受信したデータはモデムの処理ユニットを通過し、次いで、デバイスのアプリケーションプロセッサに送信され、さらなる動作に使用されます。アプリケーションプロセッサは、この情報を使用してタスクを実行したり内部状態を更新したりできます。
IoTモデムの種類
IoTモデムを分類する方法はいくつかあります。一般的なアプローチは、デバイスをネットワークに接続する際に使用する通信テクノロジに注目します。いくつかの主要なタイプについて以下に概説します。
セルラーモデム/SIMカードモデム:ワイドエリア接続にセルラーネットワーク(2G、3G、4G、5G)を利用しており、リモート展開に最適です。
Wi-Fiモデム: デバイスをローカルWi-Fiネットワークに接続し、高速データ伝送が必要な用途向けに高帯域幅通信を提供します。
Bluetoothモデム:短距離のワイヤレス接続が可能で、ウェアラブルデバイスや近くの機器と情報をやり取りするデバイスに最適です。
LPWAN(Low-Power Wide-Area Network)モデム:低消費電力で長距離通信ができるため、農業用センサーや大規模施設に配置された産業用監視装置など、バッテリー駆動の機器に最適です。
具体的なユースケースにおけるモデムの使用目的に応じ、さまざまなタイプを選択できます。ネットワークカバレッジ、データ伝送速度、消費電力、コストなどの要因に応じて決定します。
SIMカードモデムのユースケース
業種 | ユースケース | 説明 |
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車両管理 | リモートアセットトラッキング | 車両の位置、性能、健康状態をリアルタイムで追跡し、ルートや燃費を最適化し、運転者の安全を確保します。 |
在庫管理 | アセットトラッキング | 貴重なアセット(輸送コンテナ、機器、家畜)を追跡し、リアルタイムの位置データを把握して盗難を防止します。 |
環境モニタリング | リモートモニタリング | 遠隔地の環境条件(温度、圧力、水質)をリモートモニタリングし、分析や介入を行います。 |
スマートメーター | 双方向通信 | ユーティリティ消費(電気、水、ガス)をリアルタイムモニタリングし、資源管理の効率化とコスト削減の可能性を探ります。 |
街灯制御 | リモートコントロールと最適化 | リアルタイム要因(時間、天候、歩行者の交通)に基づいて街灯の遠隔制御と最適化を容易にし、エネルギー消費を削減します。 |
廃棄物管理 | センサーベースモニタリング | ごみ箱に設置したセルラー接続のセンサーが充填レベルをモニタリングして最適な収集ルートを設定し、収集回数を削減します。 |
産業オートメーションとM2M通信 | リモートマシンモニタリング | 産業機械(工場、遠隔地)の状態とパフォーマンスのリアルタイムモニタリングを行い、予知保全に役立ちます。 |
産業オートメーションと制御 | 遠隔制御とモニタリング | セルラー回線により、産業プロセスの遠隔制御とモニタリングが容易になり、生産ラインや重要なインフラを自動化・最適化します。 |
コネクテッドサプライチェーン | リアルタイムトラッキング | サプライチェーン全体の商品や資材をリアルタイムで追跡し、物流を効率化し、透明性を高めます。 |
農業 | 精密農業 | 土壌の状態、作物の健康状態、灌漑システムをリモートモニタリングし、資源の利用と収量を最適化します。 |
建設 | コネクテッドコンストラクションサイト | 建設機械とセンサーを接続し、進捗状況のリアルタイムモニタリング、作業者の安全確保、およびアセットトラッキングを実現します。 |
小売 | POSシステム | 遠隔地や一時的なイベントでのPOSシステムにおいて、信頼性の高い接続を実現します。 |
IoTモデムとIoTモジュールの違い
ほとんどの場合、モデムとモジュールは同じ意味で使用できますが、技術的な違いがいくつかあります。
特徴 | IoTモデム | IoTモジュール |
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機能 | デバイスがネットワークに接続して、データをワイヤレスで交換できるようにします。 | デバイスがネットワークに接続して、データをワイヤレスで交換できるようにします。 |
統合のレベル | 追加機能(SIMカードスロット、アプリケーションプロセッサ)を備えることで、より完全なユニットになることがあります。 | 中核となるコミュニケーション機能に重点を置きます。すべての機能を利用するには、追加のコンポーネントが必要になることがあります。 |
認証 | セルラーネットワークのための事前認証があり、統合が簡単になることがあります。 | 通常、特定のセルラーネットワークの認証を受ける最終製品への組み込みが必要です。 |
フォーカス | IoTデバイスのネットワークコネクティビティのための実用的な機能に重点を置きます。 | 中核となるコミュニケーション機能に重点を置きます。 |
主要なプレーヤー
アジア、特に中国は、最も急成長しているセルラーIoTモデム製造のフロントランナーと言えるでしょう。これは、大手メーカーが集中していること、業界に対する政府の支援があること、国内のIoT市場が大きいことが理由です。北米や欧州など他の地域も有望です。