マルチIMSIはMultiple International Mobile Subscriber Identityの略で、SIMカードに複数のIMSIを保存する比較的新しい方法です。マルチIMSIを使用すると、デバイスは必要に応じて複数のキャリアに接続できます。
IMSIの構造
IMSIは、次の3つの異なる桁部分で構成されます。
MCC(Mobile Country Code):最初の3桁の部分が対象となり、通信事業者(MNO)が運用を行う国を表します。日本の事業者の場合は440または441となります。
MNC(Mobile Network Code): 対応する通信事業者(MNO)を示しています。MCCに続く2桁または3桁が対象となります。
MSIN(Mobile Subscription Identification Number):加入者コードとも呼ばれ、ユーザーを識別する固有の番号です。MCC、MNCに続く9桁~10桁が対象となります。
これらの情報を使って通信事業者は、加入者の住んでいる国や使用しているネットワークを特定することが可能となります。
マルチIMSIの機能
通常、特定の地域(国)および通信キャリア(MNO)に対して1つのIMSIが紐付けられます。ただし、デバイスが契約しているMNOがサービスを提供している特定の地域(国)の外に出ると、ネットワークローミングパートナーとして設定されている他のMNOに接続されます。自国の通信キャリア(MNO)が冗長なカバレッジ(自社以外のMNOとの接続)を提供することは稀ですが、マルチIMSI SIMカードは、承認されたネットワークのリストを処理することによってそれを可能にします。1つ目のIMSIに使用可能なネットワークがない場合、もうひとつのIMSIに自動的に変更します。IMSIスワッピングプロセスには、アクティブIMSIを使用したSIMのプロビジョニング、位置情報の更新、デバイスの位置情報に基づく新しいIMSIへのアプレットの自動切り替えなど、いくつかのステップが含まれます。
マルチIMSIとeUICCの違い
マルチIMSIとeUICCのテクノロジーは、いずれもキャリアスイッチングと複数のMNOプロファイルの保存を可能にしますが、両者には根本的な違いがあります。
マルチIMSI SIMを使用すると、複数のキャリア契約を同時に保存できるため、頻繁な切り替えが不要になります。SIMカードの製造段階で、特定のプロファイルが選択され、カードにプリロードされます。プロファイルを後から変更や削除することはできません。すべてのプロファイルがアクティブである一方、SIMカードは、所定の規則に従って優先するプロファイルを決定するようプログラムすることが可能です。例えば、デバイスがネットワーク契約を保有する国の間で移動する場合、対応するプロファイルに自動的に切り替えるようプログラムできます。
eUICC対応のSIMカードの場合、追加のキャリアプロファイルをOTA技術を使って遠隔でダウンロードできるため、製造後にキャリアプロファイルを追加または削除する柔軟性が求められる場合に最適です。。
これらの違いから分かるように製造後のプロファイル追加・削除の有無や、同時に複数プロファイルをアクティブする必要の有無など自社の要件に合わせて最適な技術を選択することが重要となります。