SoftSIMは「仮想SIM」とも呼ばれ、SIMハードウェアが不要の、ソフトウェアベースによる加入者識別モジュール(SIM)です。通常、物理SIMではなく、デバイスのメモリとプロセッサまたはモデムに格納されています。
SoftSIMの外観
SoftSIMは物理モジュールを持たないソフトウェアベースのソリューションであるため、従来のSIMカードやeSIMのような形とは異なります。SoftSIMは単に、通信デバイスのメモリおよびプロセッサ内に格納されたソフトウェアアプリケーションやデータの集合体として存在します。その形式は、アクセスや管理に使用されるユーザーインターフェイスまたはソフトウェアインターフェイスに依存します。これは、個々の実装と、SoftSIM機能の処理に使用されるソフトウェアプラットフォームによってさまざまです。
SoftSIMと柔軟性
SIMサイズの小型化によって、より小さなIoTセンサーを多様な場所に設置できるといったメリットが生まれ、メーカーと顧客は最適な場所を選択して保護と効率を最大化することが可能になります。デバイス内の物理的なスロットまたはスペースが不要なため、より軽量な設計が実現するとともに、より小さなデバイスサイズでの試験が可能になります。
コスト削減
SoftSIMの普及により、物理的なコンポーネントの購入や設置が不要になるため、製造コストを削減し、生産時間を短縮できる可能性があります。ソフトウェアを組み込んだ脆弱なハードウェアを入手するのではなく、ソフトウェア自体のライセンスを取得する場合と同様の考え方です。
環境要因からの保護
eSIMと同様に、SoftSIMはSIMカードスロットが要らないため、物理的な挿入や取り外しが必要ありません。SoftSIMの採用によりSIMカードスロットをなくすことで、ほこり、水、感電、振動、極端な温度から損傷を受けるリスクが大幅に軽減されます。
標準化の障害
SoftSIM用の標準アーキテクチャを確立している管理機関は存在しません。このため、ソフトウェアのみのSIMの実装を決定する際には、ベンダーの順応性が高くなります。ただしメーカーは、ソフトウェアの保存場所などの詳細を評価した上で、パフォーマンスや信頼性への影響を見定める必要があります。
セキュリティの問題
ハードウェアを排除するという概念は魅力的に思われるかもしれませんが、SoftSIMには物理的なコンポーネントがないこと以外にも考慮すべき点があると認識しておく必要があります。SIMをモデムやデバイスのオペレーティングシステムにインストールすると、新しい脆弱性が発生する可能性があります。
オペレータは、自身の認証情報のセキュリティと、SoftSIMの使用に伴いセキュリティが低下する可能性に関して、深刻な懸念を表明しています。オペレーティングシステムはハッキングの標的にされる場合が多く、オペレータプロファイルがハッキング活動に晒されるリスクがあります。
SoftSIMとeSIMの比較
「eSIM」という用語は、MFF2フォームファクタを指すと同時に、一部ではembedded Universal Integrated Circuit Card(eUICC:組み込み型ユニバーサル集積回路カード)の同義語と誤解されているため、2つの異なるテクノロジーを指すことからしばしば混乱を招きます。実際、eUICCは、SIMフォーマットに依存することなく、オペレータプロファイルをリモートで管理、追加、削除するテクノロジーであり、一方eSIMは、上記の特定のフォームファクタを指しています。いずれにしても、これらのテクノロジーはいずれもSoftSIMと同義ではありません。
すべてのeSIMには、専用のハードウェアコンポーネントがあります。ハードウェアが組み込まれている場合でも、デバイス内の物理的なスペースを占有します。新しいiSIMテクノロジーについても同じことが言えます。一方、SoftSIMは、ソフトウェアとデータのみで構成され、物理的なモジュールはありません。
さらに、SIMカードのメーカーおよび販売業者が自社製品をeSIMとして表示するためには、eSIMアーキテクチャに関するGSMAの基準に準拠する必要があります。特に、消費者向けeSIMとM2M(マシンツーマシン)通信用eSIMには別々のアーキテクチャが存在します。逆に、SoftSIMの構成要素を定義する規制機関や基準は存在しません。