ネットワークの選定とはまさにその言葉通りの意味で、デバイスによって接続先のネットワークを選択するプロセスです。自社のIoTデバイス特有の要件をはじめ、カバレッジ、データ伝送速度、消費電力、スケーラビリティ(拡張性)、コストといった要因を複合的に鑑み、最適なネットワーク選定を実施することが重要です。
ネットワークテクノロジー
IoTに利用されるネットワークはセルラー系、非セルラー系に大別され、それぞれ以下のような通信規格があります。
セルラー系(ライセンス系)
2G
3G
4G
LTE-M (Cat.M1)
NB-IoT
非セルラー系(アンライセンス系)
Wi-Fi
Bluetooth
Zigbee
LoRaWAN
Sigfox
ELTRES
ZETA
カバレッジと電力
デバイスの移動の有無や設置する環境がアクセス困難な場所か、といった条件に応じて、ネットワークインフラの可用性、信号強度、およびペネトレーション能力の要因を考慮する必要があります。さらに電力に関する要件(バッテリー容量や外部電源の有無など)次第で消費電力や省電力化技術の対応有無、特定のネットワークに固有の特性などを考慮して選定を行う必要があります。
データ量、帯域幅、およびセキュリティ
小さなセンサーによる読み取りからカメラ映像などに代表される大規模なデータ伝送に至るまでユースケースやデバイスによってデータ容量は大きく異なります。そのためIoTデバイスのデータ要件を評価した上で、予想されるデータ量と求められる伝送時間から必要な帯域幅の提供が可能なネットワークを選択することが不可欠です。例えば、リアルタイムデータ伝送を必要とするアプリケーションの場合、より高い帯域幅を有するセルラーネットワークが好まれる可能性があります。
また、IoTデバイスは機密データを扱うことが多いため、ネットワーク技術の選定と合わせて暗号化、認証、安全なデータ伝送プロトコル、VPNの要否など、さまざまなネットワーク内のセキュリティ要件を考慮する必要があります。
スケーラビリティ(拡張性)とコスト
ネットワークの選定では、そのネットワーク内のIoTデバイスの増加に確実に対応できるよう、選択するネットワークテクノロジーのスケーラビリティも考慮に入れる必要があります。同時に、価格体系やデータプランの他、手数料やデータ使用料などの関連費用も考慮に入れる必要があります。ときには複数のネットワークテクノロジーを組み合わせて、場所、可用性、コストなどの要因をもとに最適なネットワークを選択することが得策です。
ネットワークの選択方式<自動ネットワーク選定>
通常、モデムには、ネットワークの選定に自動モードと手動モードという2種類のモードが用意されています。SIMカードで使用される自動モードは、シームレスな動作のため推奨されています。自動ネットワーク選定とは、IoTデバイスが手動操作なしにネットワークを選択して接続するプロセスを指します。デバイスは、事前に定義されたアルゴリズムを使用して、信号強度、品質、セキュリティ、コストなどの要因に基づいて、利用可能なネットワークのうち最適なものを選択します。この手法は、IoTデバイスが、場所、可用性、または特定の要件によって異なるネットワークに到達する必要がある場面で一般的に使用されます。
<手動ネットワーク選定>
この選択には、IoTハードウェアの接続先のネットワークを選択して構成するプロセスにおいて、ユーザーが必要となります。この手法では、ユーザーがネットワークプリファレンスを管理し、ネットワークパラメータを直接指定することができます。特定のネットワークが優先される場面や、セキュリティの観点からネットワーク接続に明確なユーザー承認が必要な状況での使用が一般的です。
上記のような項目に留意して自社デバイスに必要な要件を洗い出し、最適なネットワーク選定を行うことが重要となります。